Profile

O.L.H.
ー Only Love Hurts ー

旧名「面影ラッキーホール」 通称「O.L.H.」。
2013年10月より「Only Love Hurts」に改称。
1992年創設。今や日本に現存する唯一(?)の非感謝系音楽実演家として知られる、X-RATEDノワール歌謡ファンクバンド。日本の知の巨人、故・吉本隆明氏をして「この人はうますぎるほどの物語詩の作り手だ」と言わしめたストーリーテリング、目を背けたくなるほどリアルな題材、歌謡曲の遺産を受け継ぐキッチュなメロディラインと高度な演奏技術が織りなす〈敬虔なる不謹慎〉。アンチ・エコな編成はヴォーカル、ドラムス、キーボード、ギターもコーラスもパーカッションも2人ずつ。後はベースにホーン隊にと、数えるのも面倒な計13人。
道尾秀介・湯浅学・田口トモロヲ・町山智浩・宮藤官九郎・河原雅彦氏ら、音楽よりもむしろ文学・演劇方面からの高評価を受ける。 2013年4月に突如として改名発表。暫定的に「the artist formerly known as面影ラッキーホール」を名乗ったのち、公募を経て、2013年10月14日に新バンド名 Only Love Hurtsに改称。




1992年にボーカル/作詞のaCKyとベース/作編曲のsinner-yangを中心に結成。aCKyはこれが生まれて初めて組んだバンドである。1993年より「面影ラッキーホール」と名乗る。バンド名は医療用ダッチワイフ「面影」と、80年代の風俗の仇花「ラッキーホール」をニコイチにしたもの。この頃aCKyは「面影」の製造元であるオリエント工業にコンタクトを取るも、全くリアクションがなかったという。初期は東京ロッカーズ~東京ソイソースに連なる正調アンダーグラウンド的な音楽性にアジテーションというスタイルであったが、激しいメンバーチェンジを繰り返しながら、物語性の強い歌詞と、演歌・歌謡曲からヒップホップ・ファンクまでを脈絡なくカットアップするサウンドの独自のスタイルが出来上がる。

1996年11月にはインディーズ・レーベルより初の音源「メロ」発売。このアルバムのライブ会場売り限定特典には、上野の中東系密売人から仕入れた3000円分の偽造テレフォンカードが付属しており「買っても損しないアルバム」がキャッチ・フレーズであった。またジャケットには漫画・劇画のコレクターであるaCKyのアイデアで70年代劇画の巨匠・石井隆の絵を使用。伝手を頼って何とか本人に辿り着き、快諾を得るも表現者としての説諭を受けたという。このアルバムは朝日新聞文化面において「真剣な社会批判か?あるいは壮大な冗談か?」と採りあげられた。

1997年にはソニーミュージックエンタテインメントと契約し、ファースト・アルバム(当初は「いろ」と名付けられる予定であった)を完成させる。ジャケットには前作同様aCKy のアイデアで官能劇画の大家・ケン月影にイラスト書き下ろしを依頼。しかし完成後に「歌詞もジャケットも全てが品位を欠くためリリース不可」とされ、協議の末契約を解除。マスターテープとジャケットを譲り受ける。これらは一部改編を加え、1998年11月に徳間ジャパンコミュニケーションズから「代理母」として発売となる。しかし、またも発売直前に担当ディレクターが失踪する等、非常に難産のリリースであった。また同作は98年発売ながら2010年7月のミュージックマガジン「ゼロ年代アルバムベスト100 邦楽編」にも選出される。

1999年12月にはアルバム「音楽ぎらい」をリリース。このジャケットには昭和の絵師・故上村一夫のイラストを使用する。遺作の版権を管理する上村未亡人に絵の使用許可を求めて手紙と音源を送るが断られ、再度菓子折を持って訪ねたところ「あの音源を聴いてどんな怖い人達かと思ったら、丁寧で驚いた」と言われ快諾を得る。また「多くの方に生前の上村の劇画を誉めて頂くが、上村が生活の為に描いていた劇画には私は一切興味がなく、一度もまともに見た事がない。私にとっての上村はあくまで画家なのです」という夫人の言葉に大いに感銘を受ける。そして劇画を認めない夫人が「唯一これだけは好きだった」というイラストをジャケット用に借り受ける。

2000年頃からaCKyとsinner-yangのライブ嫌いと、本業の多忙、さらには多趣味が高じ、自主的なライブを停止。学祭等のオファーがあった時のみの活動となる。古着・古本・旧車・楽器といったヴィンテージ・コレクトに加え、時代はインターネット上での出会いの黎明期でもあり、また目を転じると日本の文壇へのノワール小説上陸の加速期でもあり、「バンドなんかより面白い事が多すぎて」(aCKy)等の理由で非稼働の時代が続く。

2005年頃より、徐々に活動再開。aCKyとsinner-yangのオリジナルメンバーと、90年代中後半より合流したsonech(キーボード)、中島カオリ(サックス)、田辺晋一(パーカッション)に加え、新たにギターに西村哲也(グランドファーザーズ)、光永巌(メトロファルス)。ドラムスに横銭ユージ(ビブラストーン)らが加わり、メンバーが固定する。

2006年7月P-VINEレコーズに移籍し、7年振りとなるシングル「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた夏・・・」をリリース。帯に記載されたキャッチ・コピー「待たせてSorry」は、野村義男のデビューアルバムタイトルからの引用である。ジャケットは新井英樹の書き下ろし。最初期の代表作「ピロウトークタガログ語」の歌詞中に出るフィリピン女性の名前が“アイリーン”なら、新井英樹の初期代表作もフィリピン女性を主人公にした「愛しのアイリーン」であり、この奇跡的な偶然から生まれたコラボレーションであった。

2007年4月perfumeをオープニングアクトに起用するという当時としては前代未聞のライブを青山CAYで行う。初期からのperfumeファンの間でもこのライブは伝説となっている。当日のあーちゃんのMCは『面影ラッキーホールさんに呼んでいただいたということで、リハも拝見させていただいたんですけど、すっごいですね!全部、生で弾いてるんですよ!』『(Perfumeは) 中田さんがいろいろやってくれとるといっても、再生ピで終わりじゃけぇ …』というものであった。またこの企画は当時のP-VINE担当者の発案によるもので、難色を示すsinner-yangを担当者が「(sinner-yangと同じ)広島出身の娘だから」、aCKyが「MCの訛りが面白いから」と説得して実現した。7月フジロックフェスティバルに出演。

2008年8月ライジングサンロックフェスティバルに出演。11月アルバム「Whydunit?」をリリース。同年の雑誌ミュージック・マガジンにおいて歌謡曲/ポップスの年間ベストアルバムに選出される。

2009年5月テレビ東京系アニメ「夏のあらし!」主題歌シングル「あたしだけにかけて」をキングレコードよりリリース。全13話が毎回歌詞違いでオンエアされるという企画であり、その抜粋版がシングル盤としてリリースされた。また、PVには当時仮出所中であった田代まさしが出演し、曲に合わせてリップシンクを行った。

2011年1月には後に直木賞を受賞(2011年)する作家・道尾秀介の招きによって、aCKyとsinner-yangとの対談が行われ、ジェイムズ・エルロイ、ジャック・ケッチャム他ノワール小説談義に花が咲いた。(小説すばる2010年3月17日発売号掲載)
3月よりコアマガジンのWEBマガジンVOBOでの連載「けだものだもの」がスタート。読者から寄せられる身の下相談にaCKyとsinner-yangが懇切に回答。しかも最後にはレコメンドの選曲をするというものであった。熟女の定義をグラフを用いて説明する「熟女グラフ」等、O.L.H.面目躍如たるこの連載は形を変え「my aim is true」という企画に引き継がれた。5月団鬼六逝去に際してコアマガジンよりsinner-yangに追悼文が依頼される。

6月にはアルバム「typical affair」をリリース。収録された「ゴムまり」は生々しい児童虐待が描かれており、今更ながらの賛否を呼んだ。前述の対談において道尾秀介は自作の中の登場人物を「物語の中で救ってあげなければと思う」と発言しており、「それに対するカウンターを務めなければ」という意識がこの歌詞を書かせたとaCKyは後のインタビューで語っている。また同曲のPVには指輪ホテルの看板女優として90年代のアンダーグラウンド・カルチャーの象徴的存在であったを岡崎イクコが郊外のアラフォーDQNを怪演。熟女好きを萌えさせる想定外の効果もあった。

2012年8月アルバム「On The Border」をリリース。リード曲「おかあさんといっしょう」PVには前作に続き岡崎イクコ出演。「くちにだしてね」は2011年6月スタートのBeeTVの番組「ユースケ&ハマケンの会員制おもかげラヂオ」主題歌に使用されたもの。この曲は当初一青窈からの依頼で書き下ろされたが「ディレクターの進め方が納得が行かなかったので曲を返してもらった。一青さんには申し訳なかった」(sinner-yang)との事で自らの曲とした。9月町山智宏のトークイベントにaCKyとsinner-yangゲスト出演。古今東西の曲の歌詞と解釈をネタに大いに盛り上がりを見せた。9月にはナタリーの依頼でWEB企画「僕たちの選んだ山下達郎」にaCKyがコメントする。これを読んだ山下達郎本人から「曲も歌詞もよいが、特に詞が素晴らしい」とのメッセージが寄せられる。

2013年4月、「面影ラッキーホール」を一般公募で改名することを発表。頭文字が「OLH」となる新名称を募集した。改名理由は以下の通り
「だって犬ですら、名前から大体の犬種がわかるじゃん。ほら”ショコラ”だ”ヴアニラ”みたいなスイーツ系だと『ああ、キャバ嬢の飼ってるロングコートチワワだな』って、飼い主の職業までプロファイルできちゃう。ましてや、面影ラッキーホールじゃあまりにも情報多すぎるでしょ。」(sinner-yang)
改名直前には一度だけ、プリンスさながらに「the artist formerly known as 面影ラッキーホール」としてシークレットライブを行った。
10月14日、『Only Love Hurts』に改名。佐賀県のタキモトさんによる命名となった。

2014年1月壇蜜主演・河崎実監督の映画「地球防衛未亡人」の主題歌「愛のキサナドゥ」を書き下ろす。元々は「愛のブラック・ホール」というタイトルであったが、映画サイドより「ブラック企業と似た響きなのでやめてほしい」とリクエストされ、歌詞変更する。

2015年1月、O.L.Hの曲をメインに構成した歌謡ファンク喜劇『いやおうなしに』上演。演出:河原雅彦 脚本:福原充則 出演:古田新太/小泉今日子/ 高畑充希/三宅弘城/高田聖子/山中崇/政岡泰志/駒木根隆介/三浦俊輔/高山のえみ/ 田口トモロヲ。公演は神奈川、埼玉、大阪、名古屋、仙台、東京の6か所、2か月に亘っておこなわれ、全国のべ3万人を動員。猥雑なストーリーに1幕を待たずに席を立つ観客が続出し、(退出の最速記録は、開演前に流れるO.L.H.の曲を聴いた瞬間)賛否両論を巻き起こした。WOWOW「勝手に演劇大賞2015」を受賞の他、高畑充希が「第23回読売演劇大賞」女優賞を受賞。2016年2月帝国ホテル孔雀の間で行われた「読売演劇大賞」贈賞式では、プレゼンターに高円宮妃殿下をお迎えした厳かな雰囲気の中、「愛のブラックホール」の映像が歌詞付きで流れ、aCKy & sinner-yangはただただ下を向くのみであった。